短歌は「小学校のころ習った記憶はあるけれど、ルールが多くて難しそう」と思っていませんか?
近年、SNSの普及により10代、20代の若者たちがスマホを使って短歌をアップするなど、身近なものになってきています。
教科書に載っていた短歌は文語のものが多かったので苦手意識のある方もいるかと思いますが、現代短歌はもっと自由です。
短歌のルール
実は、短歌をつくるときのルールはたった一つだけなのです。
それは、五・七・五・七・七の三十一音になるようにつくること。
なので、短歌のことを三十一文字(みそひともじ)と呼ぶこともあります。
それを左から「 初句(五)」「 第二句(七)」「 第三句(五)」「 第四句(七)」「 結句(七)」 と呼びます。
短歌の数え方
短歌は文字数ではなく、音数で数えます。その際に初心者が間違えやすい「長音」「拗音(ようおん)」「促音(そくおん)」について説明します。
長音
長音は、長く伸ばす音です。例えば、「空気(くうき)」の「う」や、「スープ」の「―」などです。これらの音は、音数として1音に数えます。
拗音
拗音は、小さい「ゃ、ゅ、ょ、ぁ、ぃ、ぅ、ぇ、ぉ」のことです。例えば、「教室(きょうしつ)」の「ょ」、「フィルム」の「ィ」などです。これらの音は、音数としては数えません。
促音
促音は、小さい「っ」のことです。例えば「ラッキー」の「ッ」や「学校(がっこう)」の「っ」などです。これらの音は、音数として1音に数えます。
それでは、「ミュージシャンぶったやつ」は何音でしょう?
指折り数えるとわかりやすいと思います。
正解・・・10音
短歌と俳句の違い
短歌と俳句の違いは文字数(七・七)だけだと思われている方も多いのですが、歴史もその精神も大きく異なります。
短歌は詠み手の気持ちを中心とし、作品を通して他者が作者と同様の追体験ができるように詠みます。
俳句は季語を中心とし、表現の対象を詠み手から切り離してあるがままに描写する、いわば型を極める文学だといえます。
また、俳句には必ず入れなければならない季語も、短歌には必要ありません。
さらに、数え方も違います。俳句が一句、二句、と数えるのに対し、短歌は一首、二首 と数えます。
俳句は、連歌から独立した300年前の江戸時代の頃からさかんにつくられるようになりました。短歌は万葉集が編纂された1300年前の奈良時代から絶えず詠み続けられてきました。
賞を取るコツ
天神祭献詠短歌大賞という、題詠が「祭」の選者をして10年になります。一番多く来るのが花火を詠んだものですが、花火を例えて「大輪の花」「七色の花」というような無個性な、手あかのついた表現は即、選から外します。一見私的な表現に思えますが、“花火”と聞いて最も多くの人が思いつく、ありきたりなものだと認識することが大切です。
また、視点を変えることも重要です。真正面から「花火は美しい」「屋台にわくわくする」とストレートに詠むのではなく、見る角度を変えたり、五感に訴えるのです。
たとえば、こちらは過去に子ども部門で賞を取った作品です。
今はまだ筒に大玉詰めるころ 頭に描く大川の夏 住村 豪仁
向こうからうるさいぐらい音がするそれでも思うやまないように 野中美奈
住村さんは打ちあがった花火ではなく、“筒に大玉を詰める”というその前段階を詠み、花火そのものの見る角度を変えています。
野中さんのつく品は、“うるさいくらいの音”という聴覚を使い、花火という言葉を入れずに読者の脳裏に大きな花火を打げます。
大切なのは、独自の視点です。そういう見方があったのか!という新たな気づきを与えてくれる、発見のある歌を読みたいと選者は常に思っています。
みなさんも短歌の賞に応募する際は、自分だけの考えやものの見方を描き、その短歌から一人の人物が見えてくる、そんな短歌を目指しましょう。
<高田ほのかさん>
関西学院大学文学部卒未来短歌会所属 現代歌人集会会員テレビ大阪放送審議会委員
小学生の頃、少女マンガのモノローグに惹かれ2009年より短歌の創作を開始
現代歌人協会主催の全国短歌大会選者賞
角川全国短歌大賞「与謝野晶子短歌文学賞姉妹賞」他、受賞歴多数
産経新聞のカルチャー倶楽部や朝日カルチャーセンターなど4校の講師
同志社女子大学、京都文教大学、パナソニック、パナソニックのエイジフリー、ダスキン、梅田の蔦屋書店、大阪市立中央図書館、京都国際マンガミュージアムなどに招かれ短歌の講演や講義を行い、その魅力を4千人以上の参加者に伝えている
『ライナスの毛布』(書肆侃侃房)出版
ドイツ人作家マティアス・ポリティキ著『アサヒ・ブルース』の短歌を翻案
丸5年をかけて天神橋筋の店主100人の話を聞き、店主の想いを100首の短歌に詠んだ「短歌で発見!天神橋筋の店 ええとこここやで百首展」が文化庁の協力名義の承認を受ける
五大全国紙、NHKの「ニュースほっと関西」「おはよう日本」、朝日放送テレビ「おはよう朝日」など多くのメディアで短歌の裾野を広げる活動が取り上げられ、共感を呼んでいる